
3月8日。国際女性デーにちなみ公正と平等を訴えるウィメンズマーチ東京のパレードに、巨大な「抵抗」の文字が浮かび上がりました。鮮やかな色のバナー(旗)は、さまざまな手芸で作られた小さなパーツで構成されています。このバナーはどのように生まれたのでしょう? 制作した「政治的な手芸部」実行委員会のかんなさんとマルリナさんが、小さなおしゃべり会に登壇されると聞き、参加してきました。文・写真/やまがなおこ
122人の「抵抗」をつないで
「ウィメンズマーチに向けてバナーを作るのも6年目。だんだん参加する人が増えて、展示の企画などもいただいて、バタバタしてます」 縦160センチ×横110センチ、重さ1・5キロというバナー2枚を、会場まで運んできたかんなさんは、開口いちばん苦笑いしました。「運ぶのもけっこうたいへんで」。 マーチの際には遠目にくっきりと浮かんだ「抵抗」の文字に惹きつけられましたが、近くで見ると色とりどりの糸やビーズ、毛糸、ボタン、フェルトなどが生み出す緻密な質感に圧倒されます。ガザでの理不尽な殺戮への怒り、性暴力やマイノリティーへの差別・偏見への抗議、諦めず声を上げる、自分は自分など、「抵抗」のテーマから発想した言葉やイメージが、刺繍やパッチワーク、編み物など多種多様な手法で表現されています。
「毎年、年末頃にネットで制作を呼びかけ、白地と黒地でひとり2枚を基本に、作ったパーツを郵送してもらいます。今年は『暴力や差別、不正義を決して受け入れず、怒り、抗うために、ひとりひとりの小さな抵抗を持ち寄るバナーにしたいです』と呼びかけ122人が参加しました。2月末頃に締め切り、3月のウィメンズマーチの直前に集まって一気に仕上げます。どのパーツをどこに配置するのかは、縫い合わせ当日に決めます」(かんなさん)
「素材や厚みがバラバラなのでミシンを使えず、全部で216枚のパーツはすべて手で縫いつけます。参加者に手伝ってもらって作業しますが、せっかく集まってもみんな縫うことに必死すぎて無言です。毎年とても大変でハラハラしますが、できあがったときはうわぁ‼です」(マルリナさん)
きっかけは反トランプ
この「政治的なメッセージを手芸で表現する」バナーを最初に作ったのは2020年のこと。ネット上で見た、トランプ大統領の訪英への抗議のバナーがきっかけでした。ロンドンの毛糸店の呼びかけに米国、カナダ、オーストラリアや欧州の編み物愛好家が応え、色も太さもまちまちの毛糸で1字ずつ編まれた、アルファベットの文字をはぎ合わせたメッセージは、あたたかくてユニーク、かつ辛辣に横暴な権力者を拒否するものでした。かんなさんが「こういうのを作りたい!」とTwitter(現X)でつぶやくと27人が応えました。ネットのやりとりを重ね、「わたしたちの手はつむぐ、でも口はつぐまない すべての『わたし』たちの平等のために」というスローガンのバナーを完成させたのです。残念ながら、コロナ禍でその年のマーチで街を歩くことはできませんでしたが、めげることなく、バナー作りは続きました。 2022年からは「人権」、23年は「生存」、24年は「尊厳」の一語をテーマに、それぞれから思いを込めたパーツを集めることに。「インターネットで話し合う困難もあり、たとえば『わたし』という言葉も性自認によって受け止め方が変わるなど、ひとつのスローガンを決めるのはむずかしかったんです」とかんなさん。モザイクの設計図をmaccaさんが、土台となる旗をミシンで作るのはちひろさんがと、実行委員が手分けをしています。
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◆7.8月号目次◆
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