
3月3日から7日、ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約の 第3回締約国会議(※)が開かれました。日本からは、昨秋ノーベル平和賞を受賞した日本被団協を はじめ、たくさんのNGO団体からメンバーが参加。そのお一人が、GeNuineの徳田悠希さんです。文/やまがなおこ 写真/堂本ひまり
ジェンダーの視点で見るとは?
「今回、本会議と国連軍縮研究所が主催する関連イベントと、2回発言の機会をいただいたんですが、日本の若者団体による、ジェンダーの視点で核被害を捉え直す提言を歓迎する雰囲気に励まされました。実は本会議の予定が急に変更になって、手直ししていた原稿を音読練習もしないで英語でスピーチしたんです。ほんとうに焦りました」 GeNuineは、2023年に徳田さんが友人たちと作った団体です。ジェンダーという社会的・文化的な性差や役割に着目することで、核の問題をより普遍的に、また自分自身にひきつけて理解し、より安全で平和な社会を築くことをめざしています。 会議には、原爆の被害者や支援者、研究者などにインタビューし1年かけてまとめあげた文書を提出。原爆の被害は健康被害だけでなく、経済的打撃や社会的なスティグマなど幅広いものであり、家父長制が根強い日本で多くの女性たちが男性とは異なる困窮や差別にさらされてきたこと、これからの被爆者支援には、意思決定の場から排除されてきた女性や先住民等をも包摂することなどを訴えました。
市民の立場から核兵器禁止条約第3回締約国会議で発言 (写真提供/GeNuine)
「被爆者の方々が原爆の非人道性を訴えてきたことには大きな意義がありました。でも、核兵器は一瞬にして何十万人もの人の命を奪うから非人道的というのが国際的な捉え方で、これは被害を矮小化していると思うんです。男らしさや強さと結びついて核開発が行われてきたことや、性によって被爆後の困難がどう違うかを分析することで、核兵器の問題をより深く、またジェンダー不平等に直面する若い世代にも訴えることができると感じています」 文献を調べたりインタビューをしたりするなかで、被害の証言は原爆が広島に投下された8月6日、長崎に投下された9日の出来事に集中し、辛くも生き延びたあとのことは、まだまだ言語化されていないと改めて気づかされたといいます。GeNuineでは引き続き調査に取り組むことにしています。
被爆者になるかもしれない未来
ところで、東京出身の徳田さんが核兵器の問題に出会ったのは、中学3年の修学旅行で広島を訪れ、被爆者の証言を聞いたときでした。「そもそも何かの当事者という人のお話を聞いたのが初めてで、どうしてそんなつらい体験を話してくれるのか、そのこと自体にとても衝撃を受けました」。 原爆がもたらした甚大な被害。核兵器の廃絶を訴えるシンボルとして原爆ドームは世界文化遺産に登録され、広島には海外からも観光客が訪れる。にもかかわらず、世界には1万2000発もの核弾頭がある。この時代に生きるということは、みなさんも被爆者になる未来があるかもしれない……。その言葉は徳田さんの胸に響き、でもどうすれば?という悩みとして残りました。 「広島や長崎だと原爆は身近な問題かもしれないのですが、何かしたいと探しても、東京ではなかなかこれという活動に出会えなくて」、高校生のときは国際協力活動などに参加していました。そんな2017年、国連で核兵器禁止条約が採択。核兵器のない世界をつくるために世界中の人々が活動している、でも自分は核問題に取り組めていない。「希望を感じる一方でそのコントラストも強かった」という徳田さんは、大学入学後に、KNOW NUKES TOKYOという若者団体に出会いました。
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