おおらかに、おおむねに 堀道広主宰「多摩金継ぎ部」(東京都国立市)「(特集「繕うくらし 服も、器も、思い出も」より)

割れたり、欠けたり、ヒビが入ったり。器、皿、コップ、小物、装飾品の壊れた部分を、木の樹液の漆で接合し、金属粉(金、銀、錫、真鍮)で仕上げる「金継ぎ」は、室町時代から続く繕いの文化です。近年、金継ぎに惹かれ、実践する人が増えています。
うるし漫画家の堀道広さんが主宰するワークショップ「多摩金継ぎ部」にお邪魔しました。
文/濵田研吾 写真/堂本ひまり

素材もかたちもいろいろ  
堀道広さんが主宰する「金継ぎ部」は、都内3か所(国立、西荻窪、代官山)で開かれ、それぞれ名称が異なります。「多摩金継ぎ部」が開かれるのは、堀さんの工房(国立市)です。  ワークショップは1回2時間で全5回(1回4000円、金粉は時価)。金継ぎしたい器を、堀さんのサポートを受けながら、自分で直します。5回のワークショップで直せるのは、1人3~5個くらい。工房のテーブルにのる大きさなら、ふだん使いの湯のみ茶わんから、アンティークの置き物まで、素材も、かたちも問いません。お邪魔した日は、8人の部員(生徒)が集まりました。シゲマツさんは、きれいな柄の小さな器を金継ぎ中。これで日本酒を飲むと美味しそう。 「友だちが、私の目の前で割っちゃって、金継ぎを頼まれたんです。素材がもろくて、あちこち欠けているので、それも直します。ほかにも同じ友だちから修繕を頼まれていて、直すたびにご馳走してくれます。私は金継ぎを楽しめるし、一石二鳥ですよ(笑)」  堀さんは、一人ひとりを見守りながら、ていねいにサポート。飄々とした人柄に惹かれ、「金継ぎ部」はどこもキャンセル待ち。1年くらい待って、空きが出ることも珍しくありません。 「金継ぎには、材料にも、やり方にも、その人の気持ち、器への慈しみが表れます。かつてはシニア世代の方が多かったんですが、最近は仕事帰りに立ち寄る30代、40代の方も多いです。卒業したあと、何回も受講し直す方もいます」(堀さん)

堀道弘さん


4つの「もっとも」  
堀さんは、「おおらか金継ぎ」を提唱し、4つの「もっとも」を理念にしています。 ①本物の漆を用いた、もっとも伝統的なやり方 ②シンナー、ベンジンなどの有機溶剤を使わず、もっとも体に害のないやり方 ③楽しく、わかりやすく、もっとも簡略化したやり方 ④「繕い」が目的なので、もっともお金がかからない経済的なやり方 (堀道広著『おうちでできるおおらか金継ぎ』より)  金継ぎの工程は、「割れ」「欠け」「ひび、にゅう(亀裂)」「ほつれ(表面の欠け)」と破損状態によって材料、工程、日数が異なります。基本的に、器の下処理→接合(割れ、ひび、にゅう)・充填(欠け)→切削・研削(研ぎ)→中塗り/中塗り研ぎ(2~3回行う)→粉蒔き(金、銀、錫、真鍮)→粉固め→磨き→完成です。  金継ぎは、独学かつ在宅でもやれます。金粉を使わない修繕だと、初期投資は5000円くらい。漆かぶれ(※)の可能性もあるので、肌の露出が少ない服装で行うのが大切です。初心者には、堀さんの著書『おうちでできるおおらか金継ぎ』(実業之日本社)がオススメ! 「金継ぎは、あくまで繕いであって、もと通りに戻すことではありません。言いかえれば、やり直しがきく。おおらかに、おおむねに。出来が気に入らなければ、何度でも工程をやり直せるので、失敗はありません」

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9.10月号目次

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