
館長の北川幸子さん
衣笠駅徒歩1分図書館(神奈川県横須賀市)
JR横須賀線衣笠駅そばにある、子どもと若者のための私設図書館、
略称キヌイチを訪ねたのは、まだ春浅い3月、冷たい雨の降る日でした
文/やまがなおこ 写真/堂本ひまり
元社員寮のアパート2階
長靴形をした三浦半島の、くるぶしあたりに位置する衣笠駅。JR横須賀線と京急線が接続する久里浜駅のひとつ手前の、ローカルな駅です。徒歩1分図書館と銘打たれていたそこは、ほんとうに駅からすぐの路地を入ったポケットのような場所、元は工場の社員寮だったというアパートの2階にありました。2面が窓になっていて、明るく静かです。
「子どもがふらっと立ち寄れる場所が地域にあったらいいなと思って、自分の事務所を持つつもりで」、館長・北川幸子さんが2019年に開きました。端材を使って手作りしたという本棚には、絵本や児童書、文学、実用書、ビジネス書にマンガなどが、図書分類法などとはちがう風情で並んでいます。「あえてジャンルはバラバラに置いています。いろんな本と出会ってほしいし、何に関心をもっているのかがあからさまにならない場づくりがしたいと思って、そんなふうにしています」。
ふすまを取り払った12畳ほどの室内におよそ5000冊ある本は、子どもや若者に読んでほしいといって寄贈されたものがほとんどで、誰でも無料で読んだり借りたりできます。
こころを動かすクリエイティブを
「図書館はよく利用してきましたが、とくに子どもの頃から本の虫、とかじゃないんです」と北川さん。子どもの起こす事件や虐待などに関心を寄せるなかで、子ども支援は行政や福祉、心理などの専門職が関わるしかないのかな、でも一般の人の目線でできることが何かあるんじゃないかとずっと考えてきました。
もともとファッション誌やアート誌、カルチャー誌などを手掛けるデザイン事務所でマネジメントの仕事をしてきました。「いろんな技能をもった人をまとめて、ひとつのものを作っていくということをやってきていたし、人の心を動かすことができるのがクリエイティブの力だなぁと思っていて。子どもや若者をめぐる社会課題に対する関心は、当時そんなに高くなかったけど、意識とか行動は、説明というより、心が動くクリエイティブによって変わっていくんじゃないか……。そんなことから図書館というアイデアが生まれたんです」。たまたま機会があって、北欧でいろいろな施設を見たときにも、ただ本があるだけではなくて、カラフルで遊び心のある図書館のしつらえに、人が過ごす場所としてのイメージが広がったといいます。
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