【インタビュー】蓋をした家族との日々をあけたとき  阿部直美さん(ライター)

 

インタビュー
写真家の阿部了(あべ・さとる)さんと夫婦で全国をまわり、
手作り
弁当と人を取材してきた阿部直美さん。
今年6月、『お
べんとうの時間がきらいだった』(岩波書店)と題したエッセイ集を出され、
反響を呼んでいます。
そこには
阿部さんがずっと蓋をしてきた子ども時代の日々、
親との葛藤、食の記憶が込められています。

食べる時間の湿っぽい記憶

── 阿部さんは、お弁当の「中身」ではなく、「人」に関心があると書かれています。図書館のトイレで娘さんが食べていたお弁当の写真を、お母さんが大事に残す話が印象的でした。

阿部: 以前、私のことを取材してくれたSさんのエピソードですね。娘さんのつらい気持ちを親として忘れないために、お弁当の写真を携帯電話に保存している。娘さんは、いいお母さんをおもちだな、と感じました。
お弁当というと、「素敵なもの」「愛情がつまっている」という印象があります。でも、それだけではない。人それぞれ、いろんな気持ちで生きていて、それがお弁当に表れている。その人の見えない想いが宿っている。そこを私は書きたかったんです。
──「食」を通した家族三代の物語として読ませていただきました
阿部
: お弁当の本でも、料理エッセイでもなく、家族のことを書きたかったんです。今まで抱えてきた自分の気持ちを、言葉にしたかったんです。ずっと抱えてきたテーマでしたし……。

弁当の人、ランチの時間
── 第1章「父と母」につらい思い出を書かれているぶん、「弁当の人」との出会いにホッとしました。写真家で夫の了さんです。

阿部そもそも誰かのためにお弁当を作る発想が、私になかったんです。「手作り弁当は女性らしくて家庭的」という考えに、大学時代からすごく反発していました。誰かに作ってほしいという期待もありません。ところが夫と知り合い、お弁当に違う印象を抱いたんです。私のために作ってくれて、しかも押しつけがましくなくて、なんと言うか、さりげないんです。「素敵だなあ」と素直に思いました。

・・・インタビューの続きはのんびる 11・12月号  にて


阿部直美 著『おべんとうの時間がきらいだった』(岩波書店、本体1,900 円+税)
阿部了&阿部直美Webサイト「ひるけ」 https://abesatoru.com
阿部直美ブログ「旅の途中」 https://abenaomi2020.exblog.jp

あべ・なおみ 1970年群馬県生まれ。獨協大学外国語学部卒業後、会社員を経てフリーランスのライターに。
写真家で夫の阿部了とコンビを組み、ANAグループ『翼の王国』に「おべんとうの時間」、『散歩の達人』に「東京商店夫婦」を連載中。
鎌倉女子大学主催「お弁当甲子園」の審査員も務める。著書に『おべんとうの時間』(木楽舎、阿部了との共著)
『手仕事のはなし』(河出書房新社、同)『里の時間』(岩波新書、芥川仁との共著)など。

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この記事は、11・12月号特集でご紹介しています。
◆『のんびる』2020年11・12月号 
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