【のんびるインタビュー】ゆずなさんから託されたことばと日々 

おおみや・こういち
1958年生まれ。若い介護職員の姿を追う企画・製作・監督作『ただいま それぞれの居場所』
で2010年度文化庁映画賞「文化記録映画大賞」受賞。
企画・製作・監督作に『無常素描』『長嶺ヤス子 裸足のフラメンコ』『夜間もやってる保育園』『島にて』など。
インタビュー・文/濱田研吾 写真/堂本ひまり

 
 

27歳でがんを患った看護師の鈴木ゆずなさん。
病と向き合う姿を追ったドキュメンタリー『ケアを紡いで』が4月から公開されました。
監督の大宮浩一さんは、介護福祉や居場所を通して、人と地域を見つめてきました。

 

【のんびるインタビュー】
ゆずなさんから託されたことばと日々 
大宮浩一さん(映画監督) 

<「ありのままを見てもらいたい」>

─この作品を企画した鈴木ゆずなさんとの出会いからお聞かせください。
映画に登場するNPO法人「地域で共に生きるナノ」(※1)
の理事長・谷口眞知子さんとは、十数年来の知り合いです。
谷口さんから、「素敵なご夫婦がいる」と久しぶりに連絡をもらいました。
「2人を記録してみない?」と言外に仰っているのは感じました。
ただ、谷口さんから話を聞いて、「僕には無理」と感じました。
ゆずなさんと夫の翔太さんにも、撮影をお断りするつもりでお会いしたんです。

なぜ「無理」なんでしょうか。  
今回は、ステージ4のがんを患っている若い人が、みずから病と向き合っている。

そんなゆずなさんと向き合う自信が、僕になかったんです。

ゆずなさんは「AYA世代」(※2)のことを、ていねいに教えてくれました。
重い話ではあるけれど、爽やかなんです、ゆずなさんと翔太さんの佇まいが。
そんなおふたりの第一印象が、「撮るのは無理」というハードルを越えさせてくれました。  

ゆずなさんは僕に「他人のほうがいい」とも言いました。
病気になると、受け入れられない現実がいろいろと出てきます。
僕が出会ったときは、翔太さんとふたりで受け入れようとしていたのかもしれません。
でも、元気な頃を知っている人に、今の自分のことは話しづらい。
だから「他人のほうがいい」と言ったと思います。

─映画の冒頭に「ありのままを見てもらいたい」とゆずなさんの声が入ります。  
この言葉を最初に出したのは、僕が「忘れまい」と自分に課したことなんです。

ゆずなさんの葛藤を含めた素直な思いを、ありのまま一本の映画にしていく。  

ゆずなさんと翔太さんのインタビューは、
ふたりの自然な語らいを映像におさめました。

ひとりだとシリアスになる話題も、ふたりだと表情が和らぐんです。
カメラマンの田中圭さんは30代の女性で、
ゆずなさんもカメラの前で話しやすかったと思います。

(※1)埼玉市三郷市で高次脳機能障害者とその家族を支援するための情報発信、
相談事業、居場所の運営に取り組む。https://nanojp.jimdofree.com/
(※2)主に15~39歳の思春期・若年成人世代で発症するがん(悪性腫瘍)を指す。
AYAは「Adolescent and Young Adult」の略。

 

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映画『ケアを紡いで』公式サイト
監督:大宮浩一/企画:鈴木ゆずな 制作:片野仁志、大宮浩一/撮影:田中圭
/編集:遠山慎二 配給:東風/製作:大宮映像製作所/2022年/89分

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