新たな価値を孕んだダンスが街を揺さぶる 新人Hソケリッサ!(特集「一芸笑福」より)

団地ダンス 団地のひろばにて

新たな価値を孕んだダンスが街を揺さぶる 
新人Hソケリッサ

路上生活を送る人と、路上生活経験者とで構成するダンス集団
新人H ソケリッサ!」。
ソケリッサは、「それ行け」といった意味の造語。
「新人H」は、新しい価値をもった新人類の意。
HにはHOPE、HUMAN、HOMELESSなどの意味がかけられています。
JR取手駅から徒歩15分ほどの取手井野団地。
秋晴れの午後、空き部屋となっている1室で「新人H ソケリッサ!」のダンスが披露されました。
仕切りを取り払った6畳と4畳半の和室が舞台。
キッチンが客席です。
20人ほどが身を寄せ合ってすわり、「団地ダンス」が始まりました。
この「団地ダンス」は、
とくいの銀行」の「ひきだしイベント」として開催されたもの。
誰かが預けた「とくいなこと」を、誰かがひきだす仕組み。
縁あってソケリッサのダンスも預けてあったのです。

平坦ではない人生を送ってきた人たちが繰り出す動きは、
誰も見たことがない世界へと観客を誘います。
ソケリッサメンバーの伊藤さん。団地の広場で踊る姿。
ダンスは団地の広場でも行われました。
子どもたちの声も時折聞こえてきて、
青空と団地と芝生というシチュエーションが素晴らしい!

ソケリッサのダンス。団地の広場で踊るメンバー3人。
あ!脱いだ・・・と思ったら、服を取り替えっこ。
「人間には滑稽な部分もまじめな部分もある。
いろいろな部分を見せたくてつくったシーンです」(演出を担当するアオキ裕キさん)。

ソケリッサのメンバーの4人。
取材の日、踊ったメンバーは4人!
(かっこいい!!!)

ダンサーであり振付師のアオキさん(上の写真前列右)。
ダンス留学でニューヨークに滞在中に9・11の同時多発テロに遭遇。
その際、
「何の人助けにもならない、表面的なかっこよさだけを追っていて深さがない自分」を自覚したと言います。
帰国後の2005年、街角で歌うストリートミュージシャンのそばで、
お尻を半分出して眠っているホームレス状態の男性に目がとまりました。
その人の体や皺が語る、平坦ではなかった人生。
この人が歌う側だったらどうだろう、体の中からあふれるものがあるのではと感じたそうです。

日々を生き延びることに向き合わざるを得ない路上生活の身体がもつエネルギーや芸術性を求めて、
アオキさんは、ビッグイシュー基金の協力のもと、メンバーを募りました。
『ビッグイシュー』の販売員さんに声を掛けるも、なかなか反応はなく、
これが最後の手段と自身の踊りを見てもらうことに。
「自分史上最高に緊張しました。
『私は自由に踊りました。あなたたちの自由を見せてください』と話したら、
集まってくれた5人全員がやると言ってくれたんです」。

「今日のようにダンスに興味がなかった人も足を止めるような所に踊る場を広げていきたいです」

(アオキさん)

取手井野団地の皆さん。集合写真
団地ダンスの余韻が残るなか、「はい、皆さんも踊って!」の掛け声でポーズ。

撮影/坂本博和

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