捨てずに縫おう ─ダーニングは静かなアクティビズム(特集「繕うくらし 服も、器も、思い出も」より)

穴があいた靴下、シミのついたシャツ、すれて薄くなってしまったセーター……。
そんな衣類をカラフルな糸で繕うダーニングが、いま静かなブームになっています。
かつてイギリスで広く行われてきたこの修繕方法の魅力とやり方を、
会社勤めのかたわら「おしゃべりダーニングの会」で講師をするayaさんに教わりました。
文/やまがなおこ 写真/堂本ひまり

思い出の手袋を直したくて
「家族旅行でペルーに行ったときに買った、お気に入りの手袋。やわらかいベビーアルパカ製ですぐに指先に穴があいてしまいました。なんとかしたいと思いお直しの方法を探していた頃に、ダーニングに出会いました」  ダーニング(darning)はほころびをかがるという意味の英語です。インターネット上に紹介されていた手順にしたがって、鮮やかなピンクの毛糸で繕ったら、手袋がより愛しくなったayaさん。「これで、好きなお洋服を捨てなくていい。もう新しく買わなくていいんだとワクワクしました」。  こうして、傷んだシャツやジーンズを自己流にダーニングして楽しんでいたところ、転機はコロナ禍にやってきました。「急に時間ができたので、一度、ちゃんと教わってみようと野口光さんのオンラインのワークショップに参加したんです」  ニットデザイナーの野口光さんは日本にダーニングを紹介した第一人者です。オリジナルのダーニング用具を開発し、各地で教室を開いていました。参加してみたところ、いろんなステッチのテクニックだけでなく、気持ちの上でも教わることが多くありました。



ダーニングに失敗はない

「上手にできないと思っていたけど、すごく褒めてくれるんです。先生によると、対面の教室では最後に隣同士で見せ合うと、いっせいに「素敵〜!」と声があがるそうです。つまり、みんな自分に対しては一番厳しい目を持っているということなのか、とハッとしました」とayaさんはいいます。 「これまで学校の家庭科で上手くできなかったとか、1本おきに糸をすくうのにすくうべき糸を飛ばしてしまったとか、失敗した、間違えたと気にしている人は自分だけじゃないと気づきました」  でも、そもそもダーニングは修繕の技法なので、「これが正解」というものがありません。目を拾い間違えたところでそれを指摘する人もいない。糸の質や色の選び方によって、同じステッチでも仕上がりはみんな違います。好きなように繕って、これでいいと思えたら出来上がりです。失敗のないダーニングの魅力に、ayaさんはますます惹かれていったのでした。

 

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