【インタビュー】たとえ通りすがりでもうけとめて、伝えたい 金井真紀さん(文筆家、イラストレーター)

かない・まき さん
1974年生まれ。書籍編集、テレビ番組の構成作家などを経て、文筆家・イラストレーターに。
『世界はフムフムで満ちている』(皓星社)『はたらく動物と』(ころから)『マル農のひと』(左右社)など著書多数。
近著にライター・和田靜香さんとの共著『世界のおすもうさん』(岩波書店)
撮影/堂本ひまり


インタビュー 
たとえ通りすがりでもうけとめて、伝えたい 
金井真紀さん(文筆家、イラストレーター)

パリで出会ったおじさん、世界のおすもうさん、銭湯に集う人たち、日本で暮らす外国人─。
持ち前の好奇心と行動力で世界を歩きまわり、
さまざまな人を取材し続ける金井さん。
相手がふとこぼす戦争の記憶、分断の歴史、社会の不条理にも、耳を傾けてきました。

釜山の銭湯で金井さんが出会った「ピンクおばば」(『戦争とバスタオル』より)
イラスト/金井真紀

中国で出会ったおじいさんのこと 
─年配の方を取材した人物ルポでは、意識的に戦争の話を取り上げていらっしゃいます。
金井:私は歴史の専門家でも、ジャーナリストでも、聞き書きのプロでもありません。
だから、真正面から、戦争の証言集をつくるのは自分の仕事ではないと思っているんです。
ただ戦争の話を、敷居の低いかたちで忍び込ませることは意識しています。
パリのおじさんの話(※1)かと思って読んだら、
戦争で家族と生き別れたエピソードが出てきたり……。
「これは戦争の本だ」と読者が身構えるのではなく、知らずに本に入り込んできてもらう。
そこで戦争や歴史について関心を持ってくれると、書き手としてはうれしいです。

(※ 1)金井真紀 文・絵/広岡裕児 案内『パリのすてきなおじさん』(柏書房)

 

―金井さんの中で、戦争がひとつの視点になったきっかけはなんですか。
金井:大学生のころ、大好きな先生がいたんです。
中国にルーツのある華僑の方で、大学を卒業したあと、
中国旅行に何度か連れていってもらいました。

地元の人と楽しく交流していたとき、
農家のおじいさんが「ここは中日戦争の戦場だった」と教えてくれたんです。
「日中戦争」ではなく「中日戦争」。
その言葉の違いからして、私にはショックで。
そのおじいさんは笑顔で、侵略戦争を仕掛けた日本人を恨む感じではなかった。
「かつて戦場だったこの田舎に、日本の人が遊びに来てくれて、
いっしょにご飯食べられてうれしい」と。
その言葉にすごく考えさせられました。

あの世代の人たちは、普段はこだわっていないかもしれませんが、
忘れずに持ち続けているものがありますよね。
戦争にまつわる記憶もきっとそう。
そこにこだわりを持ち過ぎたら、自分が生きづらいことも知っている。
そうした人たちがふと話してくれたりします。


─好奇心旺盛な金井さんだからこそ、話せた人もいると思いますよ。
金井:学者や専門家ではないからこそ、聞かせてくれたかもしれません。
「ゼロから教えてあげよう」みたいな。
私自身、知識がないことを逆に強みにしています。
わからなかったり、納得できなければ、もう一度訊く。
ものを知らない者の図々しさは、あえて大事にしています。

…インタビューの続きは のんびる 7・8月号  にてご購読ください。


沖縄市にある日本最南端のユーフルヤー(銭湯)「中乃湯」での金井さん。
経営者の仲村シゲさん(1933年生まれ)と。(『戦争とバスタオル』より)

この記事は、7・8月号特集でご紹介しています。
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